「うまいこと老いる」ことは、誰もが望むことです。難しいことと思っていましたが、本書を読み終えた時には意外と簡単なことかもと感じました。
その第一歩と言えることが、「老いを受けいる」ことです。
衰えるのは人として自然な営みであって、老いに抵抗し過ぎると不幸になっていくものと書かれています。
老いた場合に心身がどの様になって行くのかを、知っておくことも必要です。また、老いる前にやっておくべき事や、やっておきたい事を済ませておくと、心から穏やかに最後を迎えられるとも書かれています。
初老と呼ばれる自分を含めた50代の皆さんに是非、オススメしたい一冊です。
92歳の精神科医である中村恒子先生と、今年54歳になる精神科医・産業医の奥田弘美先生との、会話形式となっているので、とても読み易くなっています。
早速、ご紹介します。
著者の基本情報
中村恒子さん(1929年生まれ)
終戦の2ヶ月前の1945年6月に、医師になるために広島県尾道市から単身で大阪へ、混乱の時代に精神科医となられました。90歳まで現役精神科医を全うされ、今は心穏やかな余生を送ってらっしゃいます。
- 精神科医
奥田弘美さん(196年生まれ)
内科医を経て、2000年に中村恒子先生を出会ったことで精神科医に転科されました。精神科診療の他に、都内企業の産業医として従事されています。
- 精神科医
- 産業医
- 日本マインドフルネス普及協会代表理事
本書の基本情報
著者
中村 恒子 (なかむら つねこ)
奥田 弘美(おくだ ひろみ)
価格
税別1,200円
発行所
株式会社すばる舎
発行
2021年8月24日 初版
2021年10月8日 第5刷
心に残った言葉
本書は、心に残ったことや心が軽くなった言葉が盛り沢山ありました。その中から厳選した5つをご紹介します。
老いを受け入れるほど人は幸せになれる
ひと昔前は結婚したら、女性は「おばさん」、男性は「おじさん」でした。最近では、40代でも若さを手放せない人も多く、50代になって容姿が取り繕えなくなって、老いを自覚する人が多くなってきたようです。
いつまでも若さに執着して苦しむのではなく、潔く老いを認めた方が活き活きと生きられるのです。
老いることを嫌なことと捉えるのでなく、他人や世間の目から開放されて、自分らしく生きられると考えれば良いのです。
友達が多い方がいいというのは思い込み
人間関係をどんどん手放して、ストレスから気持ちを切り離せるのも、老いていくことで可能となることです。
薄い繋がりの人間関係は、価値観の合わない知り合いが増え、悩みも比例して増えるものです。老いると気力や体力は低下していくので、無駄なエネルギーは使いたくありません。数は少なても、本当に自分と合う人を見定めていく必要があります。
自分も経験ありますが、幼稚園児の時に「一年生になったら、友達100人作るんだ!」って歌わされました。知らないうちに、友達が少ないことは恥ずかしいことって、刷り込まれていたのです。
人間は孤独が本来の状態
「一人は恥ずかしい」とか「孤独はみじめ」のように、一人でいることが悪いことと思っている人が意外と多いです。これも教育やSNSなどで先入観を刷り込まれていたと思います。
SNSなどで他人と比較せず、誰に気を遣うこともせず、自分自身が快適と感じる環境で生活して良いのです。
一人でいる時間が自分を豊かにするのです。
延命治療の実態をしっかりと知っておく
延命治療の1つである人口呼吸器について、以下のように書かれています。これを知ってしまうと、呼吸が出来なくなった時やご飯が食べれなくなった時は、死ぬ時だと思って延命治療はせずに、自然に任せたいと思いました。
人口呼吸器はチューブを口から喉の奥へと突っ込んで強制的に機械に繋いで呼吸させる
↓
意識があると非常に苦しい
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麻酔薬を使って眠らされる
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数日後に呼吸状態が回復しなくても、いつまでも喉にチューブを入れておけない
↓
喉を切開して気道を確保するチューブを喉に直接差し込む
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体は老化しているので元通りの呼吸になるとは限らない
↓
数週間もベッドでの治療が続くと体力が低下する
↓
寝たきり状態となる
↓
食事も取れない状態になるので体に点滴や管が何本も繋がれてしまう
更に続きがありまして・・・、認知症が進んでしまうことを多いそうです。そうなると、チューブや管は不快なので、自分で抜こうとするそうです。その対策として、布製のベルトでベッドに手と胴体を拘束されてしまいます。
こうなると、正真正銘の拷問ですね。人生の最後に拷問を受けるのは、絶対に避けたいものです。
リビングウィルを早めに用意しておく
先進国では既に、「余計なことをすればするほど、終末期に苦しみを助長する。」と結論づけて、高齢者の自然死が推奨されているそうです。
残念ながら日本では、この結論にたどり着いていないので、自分自身での意思表示が必要になります。それが健康な時に家族や親族に伝えたり、文章で残しておくといった「リビングウィル」です。
本誌では、「日本尊厳死協会」のリビングウィルや、「尊厳死宣言公正証書(有料)」といったサービスを紹介されています。
まとめ
「老いること」、「いつかは死ぬこと」を自然な人間の営みとして受け入れると、想像以上に心が軽くなるものです。死んだ後の準備はしておく必要はありますが、準備さえしておけば良いだけです。難しく考える必要はありません(笑)。
それと並行して、身体や頭(脳)がキチンと動くうちに、やっておきたいことを済ませておくことも大切なことと感じました。
「5年後に死ぬとしたら、何をしておきたい?」と自問して、今(現在)を充実させることも大切なことです。
最終的に80〜90才代まで長生きしたとしても、70才位になった時に「やりたいことは済ませたし、いつお迎えが来ても良いかな。」と穏やかな表情で言いたいものです。